医学連:医学部入試における女性や浪人生等の扱い不利による入試不正問題についての全国調査

医学部

医学連が表題の件にてアンケートを実施、以下の提言を行った。

・受験生を公正に選抜するべく、性別・年齢を理由とした不公平な扱いを禁止せよ

・労働環境改善は何より急務、柔軟なキャリア設計を保証する研修制度も不可欠

とても深い内容ですね。日本の将来の医学の根本を問う内容だと思います。医学連のアンケート結果・提言を下記に掲載いたします。

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医学部入試における女性や浪人生等の扱い不利による入試不正問題についての全国調査についての中間報告と提言

2018 年 8 月 7 日、東京医科大学の内部調査委員会は、2006 年から医学部医学科の一般入試で女性受験者の得点を一律に減点していたことを明らかにしました。その後、文部科学省は複数の大学で女性や浪人生の扱い不利による入試不正が行われていたことを報告しました。昭和大学は 10 月 15 日の記者会見で現役と1浪の受験生を優遇した理由について「将来性が高いと判断した」と説明しています。
全日本医学生自治会連合では、医学生がこれらの問題についてどのように考えているのか、また、実際にそのような経験をしたことがあるかについて解明し、本問題の根本的な解決を目指すことを目的として、全国の医学科学生を対象にアンケート調査を実施しました。中間結果ではありますが、50 医学部から計 2186 件の回答を得ました。(2 月 1 日現在)

一律減点どう考える? 全国の医学生から様々な意見

「性別や年齢を理由に点数を一律減点していたことについて、あなたはどう考えますか?』という質問をしたところ、全国の医学生から様々な意見が集まりました。
入試差別に憤りの声が寄せられた一方、「仕方ない」「何を今更」との意見もまず、一律に減点していたことについては「人生をかけて受験に臨んでいるのに、大学側の勝手な事情で一律減点をするのは、あまりにもひどい(男性・1 年)」「大学側が差別を容認しているようなものであり、許されることではない(男性・2 年)」「一律に扱いを決めていた、システム化されていた、というのがショックでとても残念(女性・5 年)」「編入で入った身としては現役と一浪の方が将来性が高いと言われると少し悲しい(女性・4 年)」といったように、憤りや悔しさを示す回答が寄せられました。
その一方、「私立ならその大学が欲しい人材を選ぶ権利があると考える(男性・5 年)」「そうした入試をすると明記した上でなら、私大という学校の特性上あっても良いと思う(男性・1 年)」などのように、各大学の方針に沿った入試を行うことに対して理解を示す声や「今の医療現場の体制を考えたら、女性が男性と同じくらい働くことが無理なのは事実であり、正直仕方のないことだと思う(女性・6 年)」「医学部の学生は卒業するまで国から約 1 億円の投資を受けているに等しい。定年までできるだけ長く勤められる人間を優先して合格させることは致し方ない(男性・4 年)」といったように、医療現場の現状や医師養成にかかるコストの観点から、大学側が少しでも長く医師として働ける人
材を求めることに理解を示す回答もみられました。また、「性別・年齢における差別は暗黙の了解で、あるものとして考えていた(女性・6 年)」「昔からやっていたのだろうし、何を今更問題にしているんだろうという感じである(男性・3 年)」などのように、医学部入試にはこうした差別があることを承知した上で受験していたという回答もみられました。

不公平性を問題視「減点するなら事前に示せ」「年齢・性別でなく個々人を見て」


しかし、どのような立場の回答にせよ、一律に減点したことについては「医師となる上で性別や年齢が重視される理由はわかるが、もし仮に減点するとしても事前に示すべき(女性・2 年)」「減点についてその理由も含め受験生に公表している上でのことであれば、不正とは考えません(男性・4 年)」のように、一律減点を明示していなかった不公平性を問題視する見解は概ね共通していました。
また、「各々が将来何を成し遂げるかは、入学してから何に感化され何をするかによるので、性別や年齢だけで判断するのかは短絡的である(男性・3 年)」「個々人をしっかり見て判断するべきで、一律に減点するという論理は、個人の尊重に反する(男性・1 年)」といったように、入試においては性別や年齢ではなく、あくまでも受験生個々人を評価するべきという意見も挙がりました。中には、「医師という職業に就く権利というのは最大限尊重されるべきであり、医師の多様性は社会の要請するところだと考える(男性・3 年)」のように、今回のような入試差別が不公平性のみならず社会的な視点からも望ましくないとする意見もありました。

入試差別を厳しく批判し、労働環境の改善に取り組むべきとの声も

さらに、「実際の医療現場を考えるとやむを得ず減点してしまったことは理解できる。しかし大学は本来学問を行う場であるから性別や年齢を理由にすることは許されることではない(男性・5 年)」
「どんなに合理的な理由をつけて説明されたとしても、差別や誰かの人権を無視することはあってはならない(女性・6 年)」「極めて差別的で悪質な行為であると考えます。本人の努力を裏切るような行為は人道的観点からも行ってはならない(男性・4 年)」といったように、どのような事情であれ入試で一律減点を行ったことは許されないという意見がみられました。

ライフイベント

「出産・育児といった本来祝福されるべきライフイベントが嫌厭されてしまうほどの労働環境や人数不足をまず見直すべき(女性・6 年)」「医師を育成する機関としてまず為すべきなのは入学時の差別化ではなく、労働環境の変革だ(男性・1 年)」といったように、現在の労働環境や医師不足の改善にこそ大学は取り組むべきという意見もみられました。中には、「結婚しても医師を続ける女性は当然いるし、年齢が高ければ人として成熟している。今回の一件で世の人々が女性の社会進出や
多様性について少しでも考えてくれたらと切に願う(男性・4 年)」のように、今回の入試差別によって医学界のみならず社会全体に問題提起が為されたと指摘する意見もありました。

医学生の 14%「ライフイベントに関わる質問された」


『医学部入試の面接において、「結婚や出産、育児、家族の介護などの際にどのように働く予定ですか?」
など、ライフイベントに関わる質問はされたことがあるか?』と質問したところ、全体の 14%の医学生が「ある」と答えました。質問を受けていた割合については、男女間や現役・浪人・再受験で差がありま
せんでしたが、自由記述で具体的な質問内容を記載したのは多くが女性でした。

入試面接で「結婚するつもりは?」「出産はあなたにとってメリット?」


具体的な質問内容としては、そのほとんどが「将来結婚するかもしれないけど、その時の家庭と仕事についてどのように考えているか?(女性・5 年)」「出産した場合、医師を続けるかを聞かれた。「続け
る」と答えたら子どもはどうやって育てていくのかを聞かれた(女性・5 年)」といったように、将来結婚・出産した際に医師としての仕事をどう両立するかについて問うような質問でした。中には「結婚する
つもりはあるのか?出産、育児で退職するつもりか?(女性・2 年)」「男性医師は女医と結婚した場合 家庭に入って欲しいが、女医は家事育児に専念したくないのか?(女性・6 年)」「妊娠をすることはあなたにとってメリットかデメリットか(女性・2 年)」など、性別を理由にキャリアの多様性を否定するような質問も散見されました。
→今時・・・時代錯誤な質問ですね。

地域医療に貢献する意思確認、ライフイベント引き合いに

また、特に地域枠入試では「地域枠の入試で卒後県内に残ることに対して『彼氏が遠くの人だったらどうする?』と聞かれた(女性・2 年)」「地域枠推薦入試の際に、『結婚してあなたが妊娠してその直後
に旦那が東京で働くことになった時、どうしますか?』と聞かれた(女性・2 年)」などのように、その地域に貢献する意思があるかどうかの確認としてライフイベントを引き合いに出すような質問が、やはり女性を中心にみられました。その他にも、「地域枠入試において、家族の介護などの都合で地元に帰ることはできないが、本当にそれでも入学したいのか尋ねられた(女性・1 年)」「(東京出身者に対し)地方での学校教育レベルは違うが、どのように子育てをしていくか?(女性・2 年)」といった質問もありました。

年齢に特化した質問を受けた再受験生は 4 人に 1 人

『医学部入試の面接において、「あなたは(多浪や再受験のため)年齢が高いですが、どのように働 く予定ですか?」など、年齢に特化した質問をされたことはありますか?」という質問したところ、全体の 5%があると答えました。現役ではない人では 8%、「再受験である」と答えた人の中では 25%にものぼりました。
年齢を理由に、医師になる覚悟や能力を疑うような質問も
具体的な内容では、浪人を重ねた受験生に対して「あなたは 3 浪してますが、今回も落ちたら次はど
うする予定ですか?(女性・3 年)」「高校を卒業してからの苦労話とその間に頑張ったことを自慢げ
に語ってください(男性・1 年)」など、浪人を引き合いに出して受験生を追い込むような質問があっ
たことが分かりました。また、再受験生に対しては「本当に今から医学部に入って医者になる気がある
のか?(男性・3 年)」「働ける年数が少ない、それを補って大学に貢献するだけの能力があるのか?
(男性・2 年)」といったように、年齢を重ねてから医師人生に挑戦することを否定するかのような質
問がみられました。中には、集団面接で再受験生に質問が集中したり、年齢を理由に早々に切り上げら
れたりするなど、面接において不公平な扱いを受けていた実態もありました。

◢入学後も性別・年齢で嫌な経験、看過できない事例集まる
「入学後に性別や年齢等を理由に嫌な思いをした経験があれば教えてください」という質問に対しては、
約 200 件の回答が寄せられました。
医学部での女性軽視「こんなに悔しい思いをしたのは人生で初めて」
性別に関する回答では「医局説明会で『女医は結婚すれば働かなくていいから楽だよね』と何度も言わ
れた(女性・6 年)」「大学の授業で『女は知能が低い、頭が小さいから脳も小さい』と堂々と言われた
(女性・6 年)」などのように、女子学生が医師・教員から言葉による暴力を受けていたことが明らかに
なりました。また、「解剖実習で、嫌がる女子の手を無理やり掴み、ご献体の陰茎を触らせようとした(女
性・3 年)」「『先生に媚びれば単位もらえるよ』『顔で入った』と言われる。体を触られる。卑猥なこ
とを言われる、聞かれる。性別でこんなに悔しい思いをしたのは人生で初めてだ(女性・3 年)」と、男
子学生からのセクハラを受けているという回答も散見されました。中には「『女子は外科に興味が無いだ
ろ』と言われ手術見学の機会を与えられなかったことがあった(女性・5 年)」と、性別を理由に実習の
機会を剥奪されたケースもみられました。
一方、男性目線からも回答があり、「解剖実習で、女性に手厚く教え、男性には全く質問をうけつけな
いという性別による差別が露骨に行われている(男性・4 年)」「駐車許可証は、住居が大学から 2km
以上離れていれば申請できるが、女性のみ 2km未満であっても教員の許可があれば申請できるという制
度がある(男性・6 年)」といった実態があることも明らかになりました。
「年寄りは役に立たない」年齢を理由とした根拠のない誹謗中傷も
年齢を理由として受けた嫌な思いでは、「私は再受験生だが、ある教授に『お前みたいなちょっと頭の
いいだけの年寄りは臨床現場では役に立たない』と言われた(男性・4 年)」「年齢が高いことは国家試
験のリスクファクターであると数人の教員に言われた(女性・4 年)」といったように、年齢を理由とし
た根拠のない誹謗中傷を教員から受けたという回答がありました。
また、「年齢が高いからという理由で、他の学生の手本になるように、勉学でも抜きんでることやリー
ダーシップを取ることを求められた(男性・3 年)」「学祭のイベントを何故か学士編入生が中心となっ
てやらされる(男性・3 年)」「『編入、薬剤師のくせに、そんなことも知らないのか』と教授に言われ
た(男性・5 年)」など、年齢を理由にした押し付けを受けているという声もみられました。中には「奨
学金の募集で年齢制限があること(女性・2 年)」といったように、実害を伴ったものもありました。

◢一律減点の背景に医師の過重労働、7 割の医学生「将来の働き方が不安」

『女性受験者の点数を一律減点していたことについて、「女性は大学卒業後に出産や子育てで、医師
現場を離れるケースが多い。医師不足を解消するための暗黙の了解だった」と東京医科大学の関係者が
話しています。また、休職・離職する医師の存在により現場で働く医師の過重労働への不安の声もあり
ます。これらの一連の件を受けて、将来の自身の働き方について不安に思いますか?』という質問を 4
択式(とてもそう思う・まあ思う・あまり思わない・まったく思わない)で行ったところ、上のグラフ
のような結果が出ました。女性のほうが「とてもそう思う」と答えた人が多かったものの、どこをとっ
ても 7 割近くの人が将来の働き方について不安を思っていることがわかりました。

過重労働はやはり不安。改善されない現状には、悲観する声・覚悟を示す声
将来の働き方を不安に思うと回答した学生からは、「現状、体力のある医師が過重労働することで現
場をギリギリ回している。医師が心も体も健康を保てるような環境が整っているとは到底思えない(女
性・6 年)」「休職・離職する医師の存在はともかく、現場で働く医師の過重労働が、やがて医療ミス
へと繋がる(男性・2 年)」などのように、過重労働により自身の身体や生活を壊してしまったり医療
ミスに繋がってしまったりすることへの不安の声が多く挙がっていました。また、「医師が無理なく働
き続けることができるような医療現場の構築が重要であると考えるが、その見通しの立たない現状およ
び将来に強い不安を覚えている(男性・1 年)」「過重労働のため自殺率も高いのに、システムを変え
ず人的資源に頼ろうとする体制がとても不安です(女性・4 年)」といったように、現在の医療体制が
改善される見込みのない現状を嘆く声も寄せられました。
他方、将来の働き方について不安に思っていない学生からは、「自分自身でどうにか道を切り拓いて
いけると思う(女性・1 年)」「そういう世界だと分かった上で、覚悟を持って入試を受けました(女
性・6 年)」「たとえ人手不足になろうとも、自分の命を削って従事するつもりである(男性・2
年)」といった意見が挙がりました。
「女性は医師になってはいけない?」「男性医師の人権は無視しても良い?」
男女別では、女性を中心に「将来妊娠したときに周りに何を言われるのか不安。将来私たちが産休し
たあと安心して戻ってこられるようなプログラムはされているのか(女性・6 年)」など、出産や育児
の際に職場がサポートや理解が得られるか、一度休職した後に復職できるのか不安に思う意見が挙がり
ました。中には、「女性は医師になってはいけないような印象を受け、またそれが暗黙の了解になると
怖い(女性・2 年)」といったように、女性が医師として働くことそのものへの抑圧的な空気を不安に
思う声もみられました。他にも、「産休などで一度職場を離れた場合、キャリアが築きにくくなるので
はないかと不安(3 年・女性)」「新専門医制度により出産するタイミングが難しくなるという話を聞
き、働きながら子育てすることが現実的なのかと考える(5 年・女性)」などのように、ライフイベン
トによってキャリア形成に支障が出てしまう現在の研修体制を不安に思う声も挙がりました。
一方で、男性からは「現在の仕事量が変わらなければ、女性が離職したしわ寄せが男性医師に向かう
のも必然である(男性・5 年)」「男性医師ならば配偶者の出産や子育てに関与しなくてよく、また人
権を無視した使い方をしても良いという考えを感じた(男性・3 年)」のように、女性が出産や育児で
離職した際の負担が男性にかかることで、より過重な労働になることを懸念する意見が挙がりました。

総括と提言 ー 入試不正問題の根本的な解決へ向けて ー
医学部に根強く残る差別意識 ー “当たり前” を受け入れざるを得ないのか? ー
今回の調査を通じて、女性差別や浪人生・再受験生への不当な扱いに対する医学生の憤りの声が多く
集まりました。一方、「差別されることはよくあるため人によっては嫌だと思うかもしれないが、差別さ
れるのは当然な状況で入学しているため、ある意味差別されて当たり前だと考えている(5 年・男性)」
「その程度の嫌なことなど社会では当たり前なので耐性を持つべき(5 年・女性)」といったように、差
別があることを当然のものとして諦めているような意見も少なからず見受けられました。
しかしながら、医学生の権利を守る医学連として、このように医学部に根強く残る差別意識が多くの
医学生を抑圧している現状を看過することはできません。また、入試差別により医師の多様性が損なわ
れてしまうことは、多様なニーズへの対応を医療に求めている社会の要請するところでもありません。
このような立場から、入試不正問題の根本的な解決へ向けて、以下の 2 点を提言します。
受験生を公正に選抜するべく、性別・年齢を理由とした不公平な扱いを禁止せよ
入試における女性や浪人生、再受験生、ひいては地域枠学生に対する不当な扱いの背景には、医学部を
卒業後に厳しい労働環境のなか医師として就労できるのかといった大学側の懸念があります。しかし、
高等教育機関である大学が、卒業後の就労に関することを理由にして、医学・医療を学びたい受験生を不
公正に選別することは許されません。また、医師の過重労働は医師不足や地域偏在など様々な要因で起
こっているにも関わらず、学生に対し将来的な自己犠牲を強いるような姿勢も誤っていると考えます。
入学試験においては、各大学のアドミッションポリシーに則って医学・医療を学ぶ意志のある受験生を
公正に選抜するべく、性別・年齢を理由とした不公平な扱いを禁止することはもとより、ライフイベント
や卒業時の年齢に特化した質問を面接で行わないよう、各大学に強く求めます。
労働環境改善は何より急務、柔軟なキャリア設計を保証する研修制度も不可欠
それだけでなく、このような受験生に対する不当な扱いの背景には、厳しい長時間労働を引き受けら
れる人材が求められている現在の過酷な労働環境があり、これが多くの医学生の将来への働き方に対す
る不安にも繋がっています。今回の問題で顕在化した性別・年齢による受験生への不当な扱いを根本か
ら解決するために、医師の労働環境の早急に改善することを強く求めます。さらに、休職により専門医取
得に大幅な遅れを取ってしまうような研修制度の改善や、復職を支援するプログラムの充実や職場の環
境づくり、そして地域枠学生が卒業後に専門医取得やライフイベントによって指定地域からの異動を必
要とした際に柔軟に対応するなど、柔軟なキャリア設計を保証することで医師の多様性を確保するよう、
各大学・自治体・病院に対して求めます。

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